医療現場では電子カルテの普及率が年々増加傾向にあり、医師が電子カルテを操作しながら診察をする光景を目にすることが増えています。導入数が増えている電子カルテですが、ここ最近では技術の進化により、音声入力が可能な電子カルテも増えてきているのです。
通常は、タイピングで入力したり、タッチペンを活用して記入したりするのが一般的でしたが、音声入力ができるようになることで、今まで以上にカルテの作成が効率的に行えることから注目を集めています。
本記事では、電子カルテの音声入力について気になっている医療関係者向けに、概要から活用シーン、メリットなどを詳しく紹介します。また、知っておきたい注意点も紹介するので、興味がある方はぜひ参考にしてください。
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電子カルテの音声入力とは?
電子カルテの音声入力とは、医師や医療スタッフが音声を使ってカルテに記録を入力する技術のことです。
高度な音声認識技術を活用し、医師が話した内容を自動的にテキストに変換できるようになるため、これまで以上にカルテの作成が効率的になるといった特徴があります。
これまでの電子カルテと言えば、手書きやタイピングで診察の内容を記入するのが一般的で、これには医師や医療スタッフが作業しなければならないため、タイピングによって手の疲労や痛みなどが発生するケースも少なくありませんでした。
音声入力が可能になれば声をテキストにしてくれるため、タイピングや入力における作業時間を大幅に短縮でき、医師はより多くの時間を診療や患者さんのケアに充てることができるようになります。
このような特徴があることから電子カルテの音声入力は近年注目を集めており、多くの医療現場で導入が検討されています。
医療現場での音声入力の現状
医療現場での音声入力の現状としては、既に多くの医療現場で導入されているというよりは、これから本格的な導入が始まっていくとされています。
実際に2023年には、2024年4月から始まる医師の働き方改革に向け、NTTコミュニケーションズ(東京)と奈良県が、「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実証実験を実施しました。
これは奈良県内にある2か所の公立病院にて、スマホ内のAI音声認識機能を使って電子カルテの入力作業を行った実験になります。
その結果、カルテの入力業務について、長く時間がかかっている医療スタッフの場合、1日の勤務の3割を占めていたことが判明しました。そして、音声入力を活用した結果、これまでより業務時間が月に7・8時間も削減できるといった結果が出ています。
参照元:医療サイト
医療現場での音声入力の活用シーン
上述で紹介した実証実験により、電子カルテに音声入力を導入することで大幅に業務効率がアップすることがわかり、既に医療機関によっては音声入力に対応しているところも増えてきています。
その中でも「放射線科」においては、放射線読影レポートの入力においては音声入力が活用され始めており、今後も利用が増えていくと予想されています。
その他にも産婦人科では、妊娠の進行状況を詳細に記録する必要があり、胎児の成長や超音波検査の結果、母体の健康状態などの多くの情報を記録しなければなりません。これらの情報を正確に記録するためには、専門用語や複雑なデータをタイピングしてまとめる必要があります。
これまでは実際に手入力で記録するケースがほとんどでしたが、音声入力で記録することで診察中に話しながら記録を取ることが可能になり、タイピングの手間を省くことができます。
その他にも耳鼻咽喉科では、患者さんの症状や診断結果、処方薬の詳細などを記録する際に、専門用語が多用されます。例えば、耳の感染症、鼻の疾患、喉の異常などの情報を細かく記録する必要があります。
これらの専門用語を入力するのは手間がかかりますが、音声入力を使用することでより簡単に記録することができるようになります。実際に耳鼻咽喉科でも音声入力により診療の効率が大幅に向上しています。
このように、電子カルテの音声入力は幅広い医療現場で活用され始めています。通常の電子カルテに比べて医師や医療スタッフの負担を大幅に軽減できるので、今後はさらに導入が進むのではないかと言われています。
電子カルテの三原則については、以下の記事を参考にしてください。
電子カルテは、従来まで手書きで記載していた診療記録を電子媒体に記録するもので、ここ最近では幅広い医療機関で導入されるようになりました。 紙のカルテに比べると業務効率を大幅に向上させることができ、なくてはならないシステムとなっています[…]
電子カルテを音声入力で作成するメリット
電子カルテを音声入力で作成するメリットは、大きく分けると4つあります。導入を検討されている医療機関関係者は、ぜひ参考にしてください。
業務効率の向上
音声入力によってカルテを作成することで、医師や医療スタッフが記録を手動でタイピングする手間を省けます。一般的に、話す速度はタイピングよりも速いため、診療記録の入力時間が大幅に短縮されます。カルテの作成時間を短縮できれば、診療時間の効率が向上し、医師はより多くの時間を患者さんのケアに充てることができます。
また、診察中に直接音声で記録を入力できるため、診療の流れが途切れることなくスムーズに行えます。また、記録漏れや後からの補足が減少するので、今まで以上に効率的に診察を行うことができます。
これらのメリットは、特にタイピングが苦手な医師にとって大きな利点があります。入力に時間がかかっていて、診察よりもカルテの作成の方が時間を取られるなどのケースでは、音声入力による作成を検討してみてはいかがでしょうか。
医師の負担軽減
紙のカルテは手書きによって記録を取る必要があるため、医師の負担は大きくなりやすいです。また、電子カルテにおいてもタイピングで入力したり、タッチペンで入力したりしていると、手や指の疲労を引き起こしやすくなります。
このようなケースで特に負担が大きいと感じている医師は、音声入力によるカルテの作成がおすすめです。
音声入力ならタイピングや手書きによる入力の手間をこれまでと比べて格段に減らすことができます。入力によって引き起こる疲労を軽減できるため、特に手入力に時間がかかっている場合には音声入力がおすすめです。
また、医師の負担軽減の面において、音声入力をすることで集中力の維持にもつながります。音声入力なら診察中に患者さんとの会話は全て自動でテキストにして反映させてくれるため、患者さんとの対話のみに集中できます。カルテを作成するためにメモを取るのに精一杯という場合は、音声入力にすることで悩みを解消できます。
患者とのコミュニケーションの向上
音声入力は、患者さんとのコミュニケーションの向上にもつながります。音声入力を使用することで、医師は診察中に患者さんと視線を合わせたり、対話に集中したりできます。これにより、患者さんは自分の話をよく聞いてくれると感じ、信頼関係をアップすることもできます。
その他にも、診察内容をリアルタイムで記録しながら患者さんに対して説明やフィードバックも可能になるため、患者さんの理解も深めることができ、安心感を与えられる診察が可能になります。
このように、入力作業が減少することにより、患者さんとのコミュニケーションを取りやすくなります。しっかりと話を聞いてくれる医師は、患者さんからも信頼されやすいので、一つひとつの診察にもっと集中できる環境を整えたい場合は、音声入力によるカルテの作成がおすすめです。
データの管理・共有が簡単になる
音声入力によって作成されたカルテは、データとして記録され一元管理できます。デジタルデータとして管理ができれば、いろいろな診療科や複数の病院で同じ患者さんの情報を簡単に確認できるようになるため、共有もしやすくなるメリットがあります。紙のカルテでは共有がしにくいといったデメリットがありましたが、電子カルテとして管理することでデメリットは解消されます。
また、音声入力によって作成されたカルテの内容は、手入力よりもたくさんの情報を管理できるようになります。今まで以上にたくさんの情報を管理できることにより、今後の研究や新しい治療法の開発にも役立つなど、幅広いメリットを獲得できるのです。
電子カルテのランキング第1位から8位までに関しましては、以下の記事を参考にして下しさい。
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音声入力の注意点
電子カルテを作成する際に音声入力を活用するとさまざまなメリットがありますが、その反面、注意しておきたいポイントもいくつか存在しています。ここでは音声入力の注意点についても紹介するので参考にしてください。
音声認識の精度
医療現場では、専門用語や医療用語が多く使われるため、音声認識の精度はしっかりと確認しておく必要があります。
精度が低い場合、話した内容と全く異なる文章が記録される可能性があるため、カルテ作成において誤った情報を記載してしまう可能性があります。
そのため、音声入力を導入する際には、できる限り事前に試すことができるものを選択することがおすすめです。実際に試すことができれば、音声認識の精度を確認することができ、導入後に後悔することは少なくなります。
プライバシーの保護
音声入力を行う際は、患者さんのプライバシーが守られる環境を確保することが重要です。音声をテキストにする形となるため、第三者に聞き取られないような環境を整備することが大切となります。
また、音声データやテキストデータは、適切なセキュリティ対策を行っているシステムで管理することが大切です。セキュリティ対策ができていないものは不正アクセスや情報漏洩の可能性も高まってしまいますので、慎重に選ぶことが大切となります。
まとめ
今回は、電子カルテの作成に活用すると便利な音声入力について詳しく紹介しました。タイピングなどで入力して作成するカルテよりも業務効率をアップさせられるため、今後は幅広い医療現場で導入されることが予想されています。しかし、音声入力は医療現場において便利な反面、音声認識の精度やプライバシーの保護などには注意が必要なので、しっかりと注意点も守りながら導入を検討しましょう。
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