医療報酬改定DXは、政府によって推進されている取り組みの一つであり、実行に向けてさまざまな取り組みが進められています。
しかし、医療報酬改定DXといった言葉は聞いたことがあるものの、具体的に何をするのかよく理解していない方も多いのではないでしょうか。実現することによって、医療現場は大きく変化するとも言われていますので、特に医療現場の経営に携わる方は医療報酬改定DXについて必ず理解しておく必要があります。
本記事では、診療報酬改定DXの概要について紹介し、現状から具体的な取り組み内容についても紹介します。また、記事の最後では、医療報酬改定DXで必要になるレセコンを安く導入する方法も紹介しているので、そちらについても参考にしていただけると幸いです。
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診療報酬改定DXとは
厚生労働省:診療報酬改定DX
診療報酬改定DXは、診療報酬改定に伴う医療現場の負担を軽減することを目的に、デジタル技術を活用した取り組みのことです。
診療報酬の改定は2年ごとに実施されますが、通常は3月に改定内容が告示され、その後、施設基準に関する疑義照会の通知などが公表されます。そして、4月に新しい制度が施行され、5月から改定後の基準や点数に基づいた請求が開始されるという短いスケジュールで進行します。
新たに診療報酬の改定が行われると、それに合わせてシステムを改修しなければならず、ベンダーや医療従事者がその対応に追われ、現場に大きな負担がかかってしまう状況となっています。
このような問題を改善するために医療報酬改定DXがあり、実現することで現場の負担を少しでも軽減することができます。具体的には、共通算定モジュールなどの開発を進めるなど幅広い改革を行っています。
診療報酬改定の現状
病院やクリニックで診療を受ける際には、患者さんが費用の一部を支払う仕組みとなっていますが、残りは保険制度を通じて国から補助されます。診療報酬の仕組みは、2年ごとにルール変更がされるようになっています。
上記の図は、診療報酬のルール改定がされる際に、病院のシステムを提供しているベンダーや医療現場のスタッフがどのように対応しているか示されているものとなります。
図を見てもわかるかと思いますが、ピーク時では通常の2.5~3倍の人員を増やして作業を実施しているのがわかります。
そして、短い期間で制度に対応できるよう準備を進める必要があり、関係者は対応に追われているのが現状です。
このような状況を改革しようと進められているのが医療報酬改定DXであり、導入されることで各ベンダーが行っている作業を一つにまとめることができ、大幅に作業負担が軽減するとされています。
診療報酬改定DX における4つの取り組み
医療報酬改定DXが進められることで、医療現場における負担を大幅に軽減できるとされていますが、具体的にはどのような取り組みが実施されるのでしょうか。
大きく分けると下記4つの取り組みが実施される予定となっているので参考にしてください。
共通算定モジュールの開発
診療報酬改定DXの取り組みの一つである共通算定モジュールの開発は、診療報酬の計算や患者の窓口での負担額を算出するために、各ベンダーが共通して利用できる電子的なプログラムのことです。
これまでの医療報酬改定は、上述でも紹介したように「医療報酬改定告示」→「ベンダーがプログラムを開発」→「ベンダーが医療機関のシステムを改修」の流れが一般的でした。
しかし、共通算定モジュールが開発されると、「共通算定モジュールの開発」→「クラウド上で医療機関に直接提供」のみの対応で済み、ベンダーは医療報酬改定が行われるたびにプログラムを開発する必要がなくなるのです。よって、作業負担やコストがこれまで以上に削減されるようになります。
共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善
共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善は、標準化されたマスタ・コードや共通算定モジュールを提供しながら、全国医療情報プラットフォームとの連携を進めるための取り組みです。
全国の医療機関で患者さんの医療情報を共有するためにはコードの標準化が不可欠となります。
共通算定マスタやコードについては、下記の内容となりますので参考にしてください。
- コード:
医療機関が電子レセプトを審査支払機関に送る際、レセプト電算処理システムで使用される9桁の識別コード。
- マスタ:
電子レセプト請求の際に、統一コードに価格や点数、算定条件などの情報を付加したデータベースファイル。
現状、ほとんどの医療機関では独自の算定コードを使用していますが、これらを標準コードに統一するためには既存コードと新しい標準コードを紐づける必要があります。
さらに、この取り組みでは「公費・地単公費に関する医療費助成情報のマスタ作成」も含まれています。これにより、地方自治体が管理していた公費負担医療の情報が統一され、自己負担額を正確に算出できるようになります。結果として、公費負担医療が償還払いから現物給付に移行することも期待されています。
標準様式のアプリ化とデータ連携
医療報酬改定DXでは、標準様式のアプリ化とデータ連携についても取り組みの一つにあげられています。
標準様式のアプリ化は、各種帳票(申請書や報告書など)を、統一された形式でアプリやシステム化することです。デジタル化されることにより、これまで紙で書類を作成していた場合には、その手間を大幅に軽減することができ、デジタルでの提出も可能になることから、あらゆるコストカットの実現にもつながります。
また、データ連携が可能になることで、アプリや電子申請システムを使って作成した帳票等は、他のシステム(国の審査支払機関や自治体)とも自動的に連携されるようになるため、情報のやり取りがこれまで以上にスムーズになるメリットがあります。
診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等
診療報酬のルールが変わると、改定の内容に合わせて病院やシステム会社がシステムの改修を行う必要があります。診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等は、その施行時期を遅らせることにより、システム改修にかかるコストや作業の負担を軽減することが目指されています。
具体的な施行時期については、専門の協議会での議論を経て決定がされる予定となっています。
また、診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等には、医療報酬点数票のルールの明確化と簡素化も含まれます。
従来よりも医療報酬の計算ルールや点数表をわかりやすく、シンプルにすることで、医療機関やシステム会社が対応しやすくなり、作業の効率化を図ることを目指しています。
このような内容から、診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等が実施されると、ルールが簡単になるだけでなく、作業もスムーズに進むようになるため、大幅に負担を減らすことができるようになるでしょう。
診療報酬改定DXで得られるメリットとは
ここまで医療報酬改定DXの概要から具体的な取り組み内容について説明しました。ここからは診療報酬改定DXで得られるメリットについて紹介するので参考にしてください。
診療報酬改定作業の負担軽減
従来の医療報酬の改定では、医療機関やベンダーはシステムの変更作業を行う必要があり、大きな負担がかかっていました。
しかし、医療報酬改定DXが実現されると、従来の医療報酬の改定と比べて簡単な仕組みになるため、毎回の改定作業の手間や負担を減らすことが可能になります。
医療費の計算もスムーズになる
医療報酬改定DXでは、複数の医療機関を受診した場合でも医療費の計算をスムーズに行えるようになります。
医療機関ごとにバラバラな計算ではなく、統一されたシステムを使うことになるため、患者さんが支払う金額が正確に計算されるようになります。
これまでは異なる病院で診療を受けると医療費の計算が複雑でしたが、統一されることで負担を大幅に軽減できます。
医療機関のコストの負担を抑えられる
医療報酬改定DXでは、各医療機関で共通のシステムを導入することになるため、医療機関が負担するベンダーへのコストが下がる可能性があります。
従来は各医療機関によってシステムが異なるため、内容によっては大きく改修を行う必要があるなど膨大なコストが発生するケースもありました。しかし、医療報酬改定DXでは共通のシステムなので、医療機関の経費負担が軽減される可能性が高くなるなど大きなメリットがあります。
共通算定モジュールを利用する際の注意点
医療報酬改定DXでは、共通算定モジュールが利用できるなど、医療機関にとって負担の軽減やコストの負担を抑えられるメリットがありますが、注意しておきたいポイントもあります。
共通算定モジュールを利用する際には、オンライン接続に対応したレセコンが必要になります。そのため、DXに対応できないシステムベンダーは市場から撤退する可能性もあり、場合によっては他のレセコンシステムへ乗り換える必要性が出てくるかもしれません。
そうなると余分なコストが発生する可能性もあるなど、医療機関にとって負担が増える可能性も出てきます。
万が一、他のシステムへ乗り換える必要がある場合は、できる限りコストの負担を抑えるためにも「IT導入補助金」を活用したレセコンの導入がおすすめです。
IT導入補助金なら、レセコンの導入にかかるコストを、最大450万円まで補助してもらえます。補助率も1/2以内となっており、例えば900万円のシステムを導入する場合、450万円の実費で済むケースもあります。
実際に多くの医療機関ではIT導入補助金を活用してデジタル化を進めているところも多いため、できる限りコストを抑えて導入したい場合はIT導入補助金の活用をご検討ください。
まとめ
診療報酬改定DXは、医療現場の負担を軽減し、効率化を図るために進められている取り組みの一つです。共通算定モジュールの導入により、作業の手間やコストが大幅に軽減できる一方、オンライン接続に対応したレセコンが必要となるため、場合によっては乗り換え等の必要性がある場合もあります。
その際には、IT導入補助金を活用することでレセコンの導入コストを抑えることが可能なので、申請期限を迎える前に早めの準備をしておくことが大切です。
メディカルツールナビでは、補助金を活用したレセコンの導入支援を行っておりますので、レセコンの導入に補助金を活用したいと考えている医療機関は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、初回相談は無料となっています。「補助金の対象になるの?」「どのツールが合ってるの?」など、電子カルテや補助金に関するお悩みやご相談のある方はお気軽にお問い合わせください。